今回ご紹介するヒトは、令和8年度南魚沼市ビジネスチャレンジ補助金に採択された、島田眞伊さんです。島田さんが取り組むのは、今注目を集める体験型推理ゲーム「マーダーミステリー(以下、マダミス)」を活用した観光・地域コミュニティ活性化事業。参加者が物語の登場人物となり、それぞれの思惑を抱えながら事件の真相を追う没入型エンターテイメントです。
【プロフィール】

日本マダミスラボ 島田 眞伊さん
看護師として10年間働き、子育てを機に自身のビジネスを立ち上げた島田さん。現在はカフェ経営とマダミスの制作・普及事業を展開しています。
南魚沼には、若い人たちが気軽に集まって喋れる場所が少ない。そんな地域の隙間を埋めるように始まった島田さんの挑戦は、今やゲームの枠を超えた広がりを見せています。企業のマーケティング課題の解決から、閑散期の旅館を活かした観光活性化までを見据える島田さんに、これまでの歩みとこれからのビジョンを詳しく語っていただきました。
「おしゃべりが好き」だから始まった、月1回の小さな居場所づくり
私は新潟市の出身なのですが、25歳の時に結婚を機に南魚沼にやってきました。病院で看護師として10年間働いたあと、出産を機にこれからの生き方を考えるようになり、一念発起して起業。現在はカフェ経営と、マダミスの制作・普及事業に取り組んでいます。
看護師という全く異なるキャリアから、エンターテインメントの世界に飛び込んだ根底にあるのは「人が好き、コミュニケーションが好き」という想いです。看護師時代から職場の先輩や後輩を誘ってよく飲みに行ったりもしていました。
ただ、南魚沼で暮らすなかで「地域の若い子たちが、仕事終わりにちょっと遊びに行く場所、気軽に集まっておしゃべりできる場所が少ない」とずっと感じていました。ないなら自分がその場所を作ればいい。そう思い立って、看護師を続けながら月に1回、地元のホテルの一室を借りて、若者が交流できるボードゲームのイベントを始めました。これが、今につながるすべての原点です。
回を重ねるうちに「イベントをやるだけではなく、ビジネスとして持続可能なコミュニティを作りたい」「自分の拠点をしっかり構えたい」という想いが強くなっていきました。
そんな模索の最中に出会ったのが、マダミスでした。
100種類のゲームを超えた、マダミスが持つ「圧倒的な繋がり」の再現性
マダミスとの出会いは、本当に偶然でした。
ボードゲームカフェを開いていた頃、お客さんから「マダミスをやってみたい」と言われたんです。実はその時まで私自身も知らなくて、お客さんに教えてもらいながら体験したのが始まりでした。
最初は単純に「あ、このゲーム面白い!」というプレイヤーとしての感動だったのですが、やりたい人を少しずつ集めて何回かやっていくうちに、気づけば20人くらいのコミュニティが生まれていたんです。
何より衝撃だったのは、そのコミュニティのメンバー同士で、ゲームの枠を超えて一緒に旅行へ行くようになったことでした。中には、オンラインでしか接点がなく、それまで一度も顔を合わせたことがない人もいました。それでも、マダミスという共通体験があるだけで自然と打ち解けられる。「これほどまでに人と人が一気に仲良くなれて、深い繋がりを生み出せるツールは他にない」と肌で感じました。この圧倒的なコミュニティ創出の力に魅了されて、私は一気にこの世界へのめり込んでいきました。
では、マダミスとはどんなゲームなのでしょうか。
まだ体験したことがない人に説明するのは、プロですら頭を悩ませるくらいで、だからこそまだまだ広がる余地のあるエンターテインメントだとも思っています。
あえて一言でいうなら「金田一少年の事件簿のストーリーに入り込み、自分自身が登場人物として事件を解決するゲーム」です。
ルールは驚くほどシンプルで、やることは「みんなとおしゃべりをするだけ」。2人で遊ぶものから、多い時は20人くらいを巻き込むものまであります。参加者全員に一冊ずつ特別な台本が渡されて、その割り振られた役になりきって物語を進めます。勝ち負けというよりは、全員が主役となって、みんなでひとつの演劇や映画を作り上げていく感覚に近いですね。
VRがさらに進化したら仮想世界に直接入れるようになりますが、マダミスはまさにその「VRの一歩手前」にある、リアルな人間関係を使った超没入型のエンターテインメントだと思っています。

昆虫食から観光誘致まで──企業の課題を解決する「マーケティングツール」としての可能性
今、マダミスはトレンドとして非常に注目されています。このコンテンツを地方に持ち込むことで、若い人たちを呼び込む強力なフックになると確信しています。さらに面白いのは、地域の特産品や伝えたいストーリーを、「体験」として届けられることです。
現在、企業の課題解決や地域の魅力をアピールするための「オーダーメイド型マダミス」の制作にも取り組んでいます。
例えば、今進めているプロジェクトのひとつに「昆虫食を若い人に広めたい」という企業さんとの取り組みがあります。ストレートに「環境に良いから」「栄養があるから」と勧めても、なかなか手にとりづらいですよね。
そこにマダミスの特性を掛け合わせます。ゲームの物語(台本)の中に「昆虫を食べる」という選択肢や必然性を組み込むんです。そうすると「ゲームを展開させるために、一度食べてみよう」と、ごく自然にファーストステップを踏んでもらえる状況を作り出すことができる。これが、私たちが提案するマダミスを使ったマーケティングの形です。

さらに今後は、地方の大きな課題である「閑散期の旅館」や「使われていない休止施設」などにこのコンテンツを持ち込む取り組みも進めていきます。「ここでしかできないマダミスを体験するために、南魚沼に泊まりに行く」。そんな新しい観光動機を作り出し、閑散期の新しい集客コンテンツ、ひいては南魚沼の新たな関係人口を生む武器にしていきたいです。
「何者でもなかった私」が、一歩を踏み出して手に入れた強力な推進力
来てくださる方の半分以上がマダミス初心者です。最初は「敷居が高そう」と思ったけど、体験後には「絶対にまたやりたい!」と言っていただけることが多く、確かな手応えを感じています。また、新潟にはマダミスを専門に遊べる場所がほとんどないので、経験者の方からも「こういう拠点があるだけでありがたい」という声をいただいています。
地方での認知拡大にはまだまだ壁がありますが、定期開催を粘り強く続けることで「楽しかったから、今度は友達を連れていこう」という口コミが確実に広がっています。焦らずに、地方ならではの温かいコミュニティを育てていきたいですね。
実は、本格的に事業化する前に「コミュニティを作りたい」というテーマでStartupWeekend Niigata in 越後湯沢に挑戦し、優勝させていただいたことがあります。当時はまだ看護師で、すぐに店舗を持つことはできませんでしたが、その時の評価が自信になりました。月1回のイベントを2年間続けられたのも、その経験があったからだと思います。
さらに事業化を進める中で、県外の仲間から「みんなでNIIGATAベンチャーアワードに出てみない?」と背中を押されて。締め切りの10時間前くらいにみんなで必死になって書類を提出しました。ありがたいことに、ビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞することができました。同じ熱量で並走してくれる仲間の存在は本当に大きいです。
受賞をきっかけに「日本マダミスラボ」として自分の顔や実績がしっかり表に出るようになりました。それによって、東京などでマダミスを生業にしているプロの制作会社やクリエイターの方々へのアプローチが格段にしやすくなったんです。「何者でもなかった自分」が「マダミスをビジネスとして本気でやっている人」として認知された。そこが私の中で一番大きな変化でした。

(2025年7月31日_にいがた経済新聞より)
今回、南魚沼市のチャレンジ支援を受け、伴走支援が始まって2ヶ月ほど経ちますが、本当に、これほどありがたい存在はないなと感じています。ゼロイチで事業を立ち上げる時って、どれだけ自分で本を読んだりYouTubeで勉強したりしても、どうしても右も左もわからない瞬間がたくさんあります。一人だったら、孤独感や迷いで停滞してしまっていたかもしれません。
そこを親身に並走し、私の事業のフェーズに合った人脈やツテ、有益な情報を驚くほどのスピード感で繋いでくださる。一人で悩むより、何倍もの速度で事業が前に進んでいる実感があります。MUSUBI-BAの皆さん、南魚沼市含め、地域全体が全力で応援してくれている温かさを肌で感じますし「こんなに応援してもらっているんだから、期限のあるこの1年で絶対に結果を出して恩返しするんだ!」という、良い意味での心地よいプレッシャーと強力な推進力をいただいています。

3年後、5年後──「新潟のマダミスは、めちゃくちゃ尖っていて面白い」を世界へ
直近の1年は、まずは私たちの活動を地域や新潟の企業さんにしっかりと知ってもらい、マダミスが持つ本当の魅力とビジネスシーンでの有効性を伝えていく土台づくりの1年にします。
そして3年後、5年後には「新潟から発信されるマダミスは、めちゃくちゃ尖っていて面白い」と全国のプレイヤーに認知してもらい、実際にパッケージを手に取ってもらえる存在になりたいです。実はマダミスはアジア圏をはじめ海外でも非常に需要が高いテーマなので、将来的にはインバウンドや海外向けのマダミス制作にも挑戦したいと思っています。
新しい挑戦をしたい人へ
本当に、どんなに小さいことからでもいいので、まずは始めてみるのが一番だと思います。私も最初は、ホテルの一室を1日だけ借りてゲームカフェをやるところからスタートして、今があります。最初から完璧なビジネススキームや、大きな店舗を目指さなくて大丈夫です。
「言ってなんぼ」「やってなんぼ」です。自分がやりたいと思うことがあるのなら、チャンスがある場所には恥ずかしがらずに進み出て、周方に「これやりたい!」と言い続けてみてください。とりあえず行動してみると、応援してくれる仲間やサポーターが必ず現れて、景色がガラリと変わるはずです。
そして、南魚沼や新潟でマダミスを体験してみたい方、日常に刺激が欲しい方は、ぜひ私たちのカフェや、定期開催する拠点へ遊びにきてください。 公式LINE、Instagram、Xで最新のイベント告知をしていますので、まずは気軽に登録して連絡をいただけたら嬉しいです。マダミスは本当に人生が変わるくらい最高なエンタメなので、皆さんにお会いできるのを楽しみに待っています!

